アリのように働く
「犬のように働く」よりも、「アリのように働く」ほうが、会社にとっては都合が良い。
犬は忠実に走り続ける。命令に従い、休まず、ただ前を向いて。けれどアリは、群れの中で余力を残す。働く者、待つ者、そしてそのあいだに揺れる者。その余力が、非常時に組織を救う。
先日のシステムトラブル。完全ではないが、日常は戻りつつある。休日に出勤し、残業を重ね、誰かが誰かの穴を埋めた。社員も、非正規も、肩書きの境界を越えて。その姿に、普段の働き方の余白を思った。余裕があるから、無理ができる。無理ができるから、会社は止まらなかった。
ふと、アリのことを思い出した。常に働いているのは、全体の二割ほどだという。残りは、動かず、待ち、備える。その静けさが、群れの持久力になる。全員が同時に走れば、全員が同時に倒れる。だから、誰かは休み、誰かは立ち止まる。
人間の職場も、きっと同じだ。普段は目立たない人が、いざというときに動き出す。その動きが、組織の底を支えるときに、常に全力で働いている人が、余裕のある働き方をしている人を批判することがある。「もっとやれるはずだ」「なぜ手を抜くのか」と。けれど、全体を見渡せば、余裕のある人がいることもまた、大切なことなのだ。その余力が、誰かの限界を支え、非常時の力になる。
働き方は、ただの個人の姿勢ではなく、集団のかたちでもある。そのことを、忘れずにいたい。