スーパーに立ち寄って、買い物かごをのぞき込むたびに、ふと戸惑うことがある。以前なら3,000円ほどでいっぱいになっていたはずのかごが、気づけば5,000円近くになっている。ニュースでは「インフレ率は3%前後」と語られているけれど、数字よりも身体のほうが先に「高くなったな」と感じてしまう。とくに毎日の食卓に欠かせない食品の値上がりは、静かに、けれど確実に家計に響いてくる。 けれども、この重さをすべて企業のせいにしてしまうのは、少し違う気がしている。店頭に並ぶ商品の裏側では、きっとたくさんの工夫が重ねられている。パッケージを少し簡素にしたり、輸送の手間を減らしたり、見えない部分での努力によって、値上げの波を少しでも和らげようとしている。派手ではないけれど、そうしたささやかな工夫には、もっと目を向けてもいいのかもしれない。 私たち消費者も、ただため息をつくだけでは、少しも前には進めない。まとめ買いをして冷凍庫を上手に使うこと、旬の食材を選ぶこと、ポイントやキャッシュレス決済を賢く活用すること。ひとつひとつは小さな工夫だけれど、積み重ねていくと、家計の心強い味方になってくれる。 そして最近は、「投資」という言葉も、生活の延長線上にあるものだと感じるようになった。インフレは、何もしなければ、時間とともにお金の価値を少しずつ削っていく。だからこそ、資産を守り、育てることは、どこかで特別なことではなく、日々の節約と同じ「暮らしの知恵」なのだと思えてくる。 インフレを肌で感じ、見えない企業努力に思いをはせ、自分なりの工夫を重ねていく。そうやって静かに備えていくことが、不安定な時代を生きる私たちにできる、ひとつの誠実な態度なのかもしれない。