期日前投票に行ってきた
先日、期日前投票に行ってきた。前回投票したのは、おそらく兵庫県知事選だったと思う。投票を済ませて役所の外に出ると、新聞社の出口調査に声をかけられた。初めてというわけではないが、毎回遭遇するものでもないので、何か得をするわけではなくても、ちょっとした幸運のように感じる。今回は、自分が投票した候補者を正直に答えた。
統計学の凄さについては、今さら私が言うまでもない。出口調査の限られたデータから当選者を予測することができ、しかも開票前にほぼ確定的な予測が示されることすらある。たいていその予測は的中する。であれば、出口調査そのものを選挙制度に組み込んでしまってもよいのではないか、などと考えたくもなる。ごく稀に誤りがあるとはいえ、その確率が十分低いならば、コスト面でも大きな利点があるはずだ。それほどまでに統計学は優れている。
しかし、出口調査のデータそのものが誤っていたらどうなるのだろうか──そんな意地悪な疑問も浮かんでくる。もし出口調査で、わざと嫌いな候補者に投票したと答えたらどうなるか。そうした回答が一定数集まれば、間違った前提で統計処理が行われる。そして、開票前に「当選確実」とされた候補者が、いざ開票されると落選していた、ということになるかもしれない。ぬか喜びさせるという新手の嫌がらせだ。
違法ではない。が、善いこととも言えない。おそらくバレることはないだろう。そんなことを思いついてしまうと、どこか試してみたくなる。しかし、私ひとりで統計結果を狂わせることはできない。とはいえ、こんな凡人でも思いつくくらいだから、同時に多数の人が同じように考えれば、真面目に立候補した人に悲しい結果をもたらすかもしれない。それを思うと、なんとも複雑な気持ちになる。大悪党が大犯罪を企てるときにも、こういう感情が芽生えるのだろうか。
期日前投票会場へ歩いている間、そんなことばかりを考えていた。誰に投票するかよりも、出口調査にどう答えるかの方が問題に思えてくるほどだった。
投票を終えて会場から出ると、そこに出口調査の姿はなかった。
正直、ほっとした